地球市民ムーブメントと伝統・文化を生かした教育~第5回グローバルメンタルヘルスセミナー特別インタビュー

福岡で8月5日に行われた第5回グローバルメンタルヘルスセミナー~体力・心力・脳力を育てる脳教育で「地球経営時代の教育の方向性」について講演した、地球経営研究院のエマニュエル・パストリッチ院長にインタビューを行いました。

 

地球経営とは

 

環境破壊、戦争などの地球の危機は、消費的で無責任、非人間的な経営が原因です。地球経営は地球を中心とした経営です。地球全体のことを考えます。これから世界は国際化ではなく、地球化になるべきです。まだ地球を中心とした考えは常識にはなっていません。世界を考えると言うと、多くの人々は国際株や投資、金融を考え、私たちが思うような地球のための行動については考えないかもしれません。

 

よりよい世の中、新しい世の中を作ろうと思って地球の問題や解決策の話をしたり、新聞に論説を掲載しても大して効果がありません。なぜかと言うと、多くの人々は地球のためのことにはあまり集中せず、何がなんだかよく分からない状態になっているからです。地球経営意識が必要になります。

 

どうすれば地球経営意識が形成されるのか

 

地球を中心とした経営意識を持つためには自分の脳の主にならないといけません。そのためには自分を省察し、大きな意識を目覚めさせる瞑想が絶対に必要です。それは余計なことではなく、最も大事だと思います。そうでないと、皆が集中して将来のための計画が立てられない、地球に住んでいる共同体という意識が成立しないからです。そういう意味で、地球市民が行う人間性回復運動や教育・健康分野の活動は非常に大事だと思います。これからもっと力を合わせて行動し、日本、韓国、アメリカ、中国など、世界の地球市民が緊密に交流し、国家レベルではなかなか解決できないことが私たちの力で解決できると思います。皆さんと一緒に頑張れることは光栄だと思います。

 

地球市民ムーブメントの特徴と地球経営研究院の役割

 

私は2005年からワシントンにある大学で講義をするかたわら、韓国大使館の文化センターでアメリカ人に韓国文化を紹介する仕事もしましたが、それがとても楽しく、大学より楽しかったです。その頃から国際交流に関心を持つようになりました。勤めていた大学にも海外の大学の姉妹協定校がありましたが、実際の交流はありませんでした。しかし地球市民ムーブメントは、日本でもそうですが、韓国でもアメリカでも実際に熱心に活動していらっしゃる方が多いです。他の組織、大学、政府、NGOには見られない活動と雰囲気があります。そのため、地球経営研究院の院長として皆さんと一緒に、よりよい世の中にしていく活動をしていけることが、私には光栄で嬉しいです。

 

地球経営研究院ではいろんなことを考えています。まず環境についてですが、地球上の浪費、ゴミや廃棄物など、私たちの子孫が暮らす100年後のことを思うと、今とんでもないことをしています。政治家や有名人が、それを解決できるとは思いません。市民一人ひとりが力を合わせて活動するしかないと思います。日本全国、韓国とアメリカ、その他の国と一緒に、一所懸命頑張る必要があると思います。地球経営研究院では、環境の問題に関する取り組みや世界の伝統文化を再評価する活動を行っています。日本の伝統文化は、生態や教育、人と人の関係を非常に大事にしていましたが、産業化によって失ったものも多いと思います。それを克服、あるいは回復するための努力が必要ですが、自分ひとりでは絶対にできませんので、皆さんと一緒にすることを楽しみにしています。

 

地球をどうやって営むかについて深く悩んでいます。地球経営研究院では、地球市民ムーブメントに必要な研究、資料、証明など、中身を提供する役割をします。いろんな国と力を合わせて活動すればシナジー効果があると思います。

 

環境問題の解決のための地球市民ムーブメント、Think Globally、Act locally!

 

アメリカの環境学者のガス・スペスと環境問題について話した時、人間の欲望をどうやって管理していくのか、つまり考え方が何より問題だという結論でした。環境問題は人格の修養や哲学で解決できると言うのです。実に環境問題は核心的な問題です。技術でも政策でもありません。昔の人は100年、200年先の子孫のことを考えましたが、今はそうではなくなりました。プラスチックの問題も同じ悩みです。やはり長期的に共同体で生協などを作って金属やガラスのみを使い、プラスチックは一切使わないことが考えられます。今は地球市民がまだ少ないですが、100万人になればそれは充分可能だと思います。共同体で米や野菜を栽培して共同体の経済圏が作られると、地球環境のための望ましい動きができると思います。今はまだ模範の生活が立ちませんが、今後、浪費せずにものを大切にする習慣を身につけながら、多くの人に伝えていけばよいと思います。環境の問題を解決するための精神的な動きと文化の変化はどうすれば良いか分からないとおっしゃいましたが、今まさに地球市民がそれをやっていますね。自分の精神状態を変えるにはどうすればよいかについては、一指李承憲先生の『CHANGE』という本に詳しい説明があります。自分がまずチェンジして、家族とまわりをチェンジして、一定の臨界質量に達すれば環境を中心とした生活ができるようになります。まだそこまではいっていませんが、でも遠くはありません。

 

Think Globally、Act locally! これが地球市民のスピリットだと思います。最も大事なのは自分の地域で活動することですが、そうしながら他の国との協力も必要です。外国ばかり考えて地域での活動をしないと効率が悪い行動になります。具体的にどのような協力ができるかはこれからの課題で、良い意見を是非聞かせてほしいです。

 

教育の危機と伝統教育の再発見

 

今の大学は性質が変わり、企業のようになっています。なるべく多くの学生を誘致して早く卒業させてお金をもうけるという場所になり、教育ではなくなっているところが多いと思います。以前とは違って就職と直接関係のある科目が優先になったため、環境、文化、哲学のような科目は関心があっても履修しなくなっています。教育者としては苦しい現実です。

 

日本の伝統には、寺子屋という共同体の教育制度がありました。習字や朗読もして、多様な学びのできる教育でした。倫理や道徳のコンテンツがあり、人間性を育てる教育、自然とともに生きる教育、つまり私は個別の存在ではなくすべてとつながっているという考えがありました。今の市場経済では物は物で自分とは関係ないと認識します。いくらでも使い捨てても自分には責任がありません。それは現代人の考えで、昔の人はそうではありませんでした。伝統の教育が全部良いとは言えませんが、物を大事にして浪費しない、人との関係や自然を大切にする伝統の思考は生かしてほしいと思います。

 

地球市民ムーブメントは今までになかった新しいムーブメントですが、前に進みながら、同時に昔の良い環境を中心とした伝統的な文化や生活を再発見する面もあります。何百万年もの間、自然環境と調和のとれた共存がとてもよくできていました。環境の問題は、ここ70年くらいの問題で、それを克服するには、新しい技術、新しい生活、新しいインターネットのネットワークなどが必要ですが、もともと日本にあった文化を再発見して生活に生かすことも必要です。日本は昔から米一粒も大事にして、物と人間を区別せずに一体と認識していた素晴らしい文化があります。私たちが、その両面を生かして進んでいけばいいのですが、それは簡単ではありません。伝統の価値観の確認もしながら、脳の主として新しく創造していくのです。私たちの活動は簡単にできることではありません。長期的に様々なことを悩む必要があります。自分の脳の主として、自分と自分の子ども、自らが属する共同体のために、熱心に活動するのは非常にためになりますし、革命的な変化だと思います。それは自分の脳によって決まるのです。

 


地球経営研究院 エマニュエル・パストリッチ院長