第4回GMHS事例発表「こども、障害者福祉施設への脳教育導入事例」

2017年8月5日 京都大学で開催された「第4回グローバルメンタルヘルスセミナー」での事例発表

「こども、障害者福祉施設への脳教育導入事例」 高橋尚美

 

 

私は、兵庫県の神戸や明石で、脳教育にもとづいたブレイン体操を伝える活動をしています。脳教育の原理を織り交ぜてのブレイン体操は、とても納得してもらいやすくて、好評です。関節の血液が滞りやすい部分を刺激して血液循環を促進するので、体が温かくなったなどの効果を実感しやすく、体操をされた方々の感想として、アンケートでは、ほぼ100%参加して良かったというご回答をいただいています。

また、 18年間保育現場に携わってきて約1000人以上のお子さんをみてきた保育士経験を生かし、手遊びや歌などブレイン体操を織り交ぜながら、親子のびのび体操を放課後児童デイサービスや神戸大学大学院総合人間科学研究科の「のびやかスペースあーち」などで行っています。その他にも障害福祉施設、在宅介護支援センターなどでも行っています。

いろんな活動の中でも子どもに起きる変化は驚く事が多く、脳教育トレーニングを指導して良かったなと思うことがたくさんあります。まず、子どもに脳教育トレーニングを適用した時の体の効果をご紹介します。乳幼児のお子さんがブレイン体操で、背中のあたりや足裏をほぐすことで、お子さんが、じっとしている様子が見られ、体をほぐすことは気持ちがいいような様子を保護者の方に、見てもらいます。体がほぐれた後、普段お片付けが中途半端で終わるお子さんが、きれいに片づけて、お母さんがとても驚かれていました。また、初めは緊張していましたが、体がほぐれた後は、とてもリラックスされた表情をされて、かわいいポーズを決めてくれました。体のこりは、幼い時からでもあるという事を保護者のみなさんに伝えさせていただいています。

小学生くらいになると、ゲームや動画などで、一定の時間同じ姿勢が続き、体が固いお子さんが多い傾向が見受けられます。 子どもの10人に1人が 、高齢者に多いロコモ予備軍になっているという調査があります。「しゃがめない小学生」「片足立ちでふらつく中学生」など、骨や筋肉などの運動器に疾患のある恐れがあることがわかっています。脳教育プログラムを通して、体の中心をしっかりほぐすことや、様々な動きを取り込むことで、関節がほぐれて、血行がよくなって、体の柔軟性が上がります。トレーニング後、体が柔らかくなったことがわかります。

体が固いだけでなく、心因性のストレスが原因となって、無気力や暴力的になりやすいお子さんも見受けられます。特徴として、言葉になかなか表現しにくいお子さんほど「胸が詰まる」状態になり、ストレスをストレスと思わず、当たり前になって、幼い頃からストレスが蓄積されています。また、表現しない分、自分を内面的に、責めている傾向になりやすいので、さら悪循環になっているようです。

そのような心に溜まったストレスを脳教育トレーニングで解消する効果があります。脳教育トレーニングの心の効果をご紹介します。小学1年生の男の子が、脳教育のトレーニングを受け始めた時に描いた絵です。

口から黒いものを描いて赤色で塗りつぶしました。さらに赤いボールペンで大きく塗っています。生徒は、これは血だといっていました。向かって右隣の絵は、翌週、口から黒いものが前回と比べて小さくなり、赤色のボールペンは使わなくてピンク色が出てきました。この生徒は、あまり話さなくて、どことなく落ち着きがなくて、人が言っていることに対して中々聞き入れられなくて、よく回りから注意をされていました。実はこの生徒自身も、どうして聞き入れられないのか分からなくて、困っていました。そんな生徒の気持ちを聞きながら、保護者の方の気持ちもきいています。

そしてさらに1カ月後には、体の色が、赤色から黄色にかわりました。

顔の表情もはっきり表れ、今度は口ではなくて足の方が黒く塗られています。生徒に聞くと、自分の痛い所を表しているそうです。そして、その次の週になってその黒い部分がなくなって顔の表情も困った顔からやや明るくなって、色の塗り方も前回と比べて体の線に合せて塗れるようになりました。

この絵を通して生徒の心の変化を保護者の方に伝え、お互いの心と心のパイプをつなぐ話をします。生徒は、言葉や表情にあまり表さないだけで、注意されないために一生懸命たくさん考えて常に気が張って、ストレス状態であることを保護者の方に伝えています。お子さんにも保護者の思いを伝えます。このように互いの思いや見方を変えることによって人は成長する瞬間があります。この絵をきっかけに、生徒が今まであまりしゃべらなかったのが、自己表現ができるようになりました。保護者の方の協力をもらいながら、生徒の成長につなげています。

これは5歳の女の子が描いた絵です。

トレーニング開始1~2か月の絵は描き方や色の塗り方が、少し荒い感じがします。描き方もまだ不完全で、色も塗らない部分が多い所が見受けられます。


4~5カ月になると頭と体と手足のバランスが整って、色も全体的に丁寧に、塗ってカラフルな色を使う様になりました。またハートマークも書かれて、服もおしゃれになってきました。


さらに6~7カ月になると、このような細かい絵を描くようになりました。それだけ手先の細かい動きができるようになりました。また登場人物も増えて微笑ましい光景が表現されています。これは、自分の脳をイメージして描いたものです。自分の生命を維持している司令塔である脳の仕組みを知って、理解しようとすることが、脳教育の基本となっています。

次に、脳教育トレーニングが脳の機能に与える効果を紹介します。「脳波測定器」を使ってセンサー通じて、脳波をデータ化して、お子さんの状態を知ることができます。おでこと耳たぶにもセンサーを付けて、記憶力や判断速度、数理的なゲームを通じて、脳波を測定します。測定の種類は、集中力やその変化、瞬間記憶力、判断速度、左脳と右脳の活性度、脳ストレス等をグラフで見ることができます。

一度の脳教育の授業の前後で、このような脳波の変化が見られました。

活性脳波リズムのグラフでは、 トレーニング前は、脳波が集中しにくい状態を表すベータ波とガンマ波が90%台だったのに対し、授業後になると20%ダウンして平均的な領域に近づき、集中力が安定しやくなったことがわかります。

集中力の変化を見ると、授業前は集中力が高かったり、低かったりとバラつきがあったのが、授業後は、全体的に安定的になりました。それに伴って瞬間記憶力と判断速度も上がって、脳の機能のバランスがとれたことが見受けられます。

また、年間通して脳波測定をした、子どもの脳の変化を見てみましょう。

初回、グラフのバランスに偏りがありました。右脳と左脳の活性度の割合が、極端に右脳が低かったのが、半年後から右脳の活性度が上がって右脳と左脳のバランスが整いだして判断速度もあがり、集中力もあがりました。この生徒さんは、脳教育によって以前よりも随分と落ち着くようになりました。ここまでは、子どもの体と心と脳に与える脳教育トレーニングの効果を見てみました。

 

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以前、障害者に脳教育トレーニングを適用した研究結果を聞いて、効果がある事を知りました。私は、もともと障害は個性だと思っていましたので、障害者の方々が脳教育トレーニングで自己価値を見つけ、可能性をのばしていてほしいと思い、積極的に取り入れてきました。障害福祉施設、就労継続支援(B型)事業所で、療育として20代の障がいの方々に2年前から、 月2回、 40分のブレイン体操を行っています。利用者の方からお聞きしている変化は、肩こり改善、リラックス、体温上昇、筋力・体力強化などがあり、精神的には楽しい、前向きになった、幸せだ、自分の表情が変わったなどの反応があります。

利用者の保護者の方々とったアンケートの結果です。

「この脳教育のトレーニングで表情に変化がみられたか」という問いに対して、「表情が明るくなったように見える」が55%と「ブレイン体操を行った日は表情が明るい」が7%で、合わせて62%の利用者が効果を感じています。

次に、「脳教育トレーニングで集中が変わったか」という問いにたいして「仕事に対して集中しているように思う」が54%。


また、「精神的に安定してきたように思う」と62%の方が変化を感じ、ブレイン体操によって、特に精神面に効果があることがよく分かります。利用者の変化と保護者の皆さんの良い反応が私にも力になり、利用者のみなさんが自己価値を見つけて成長につながるきっかけになっていると思います。

今、精神的に不安定なお子さんや、イジメ、不登校、また暴力的なお子さん、無気力なお子さんたちが増える傾向にあり、対策が必要となっています。 またハンデを抱えている方々には心と体のトータルなケアが必要だと思います。脳教育トレーニングを通して、体からのアプローチによって、感情面をほぐして、精神面をケアして、たくさんの子どもたちやハンデを抱えている方々に夢と希望を与えるように、これからも頑張りたいと思います。ご清聴ありがとうございました。